脳卒中(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血)治療において,リハビリテーションとは,治療の重要な柱であり,発症(入院)の可能な限り早期からの開始が必要とされます.運動麻痺を起こした手足を,早期に動かすことmobilizationをしないと,筋肉の変性・短縮が進行し,痙縮が起こり麻痺が増悪することが指摘されています.
脳卒中リハビリテーションの流れ(早期自宅復帰と転院)
図1には今日の我が国における脳卒中治療・リハビリテーションの一般的な時間的な流れを示します.急性期病院での治療後に,回復期リハビリの病院へ転院をしてその後のリハビリを継続する方法と,もう一つは下の流れのように,急性期病院において早期リハビリを実施して,歩行などを獲得して自宅復帰し,自宅で訪問リハビリの制度を利用して回復をはかる二つの方法があります.
相澤病院においては,早期リハビリを徹底して改善をはかり,可能な限り直接自宅復帰できるシステムを作っています.

相澤病院における脳卒中リハビリテーションの治療実績(平成18年度)
図2には,平成18年度の相澤病院に入院をし,リハビリを実施した脳卒中患者さんの退院時に内訳を示します.64%が自宅復帰,35%が回復期リハビリ病院へ転院となっています.
自宅復帰した患者さんのうち20%が,当院の訪問リハビリand/or外来通院リハビリのシステムを利用しています.この退院後に在宅でのリハビリを利用するシステムを早期退院支援システムESD=early
supported dischargeと国際的に命名されています.
図3には,退院先別の在院日数,入院時NIHSS(脳卒中の重症度スケール),入院から1週後の運動FIM=Functional Independence
Measure(自立度評価尺度,日常生活動作の自立度の評価方法,13項目あり,満点が91点),退院時運動FIMを示します.
早期リハビリにより直接自宅退院し,その後訪問リハビリなどを利用された群は,在院日数は26.7日であり,入院1週間のリハビリで運動FIMは49点(介助で歩行と日常生活動作の洗面・排泄などが可能)へと改善しており,退院時の運動FIMは75点まで改善をしています.
一方,転院群は入院時のNIHSSは12.5と高く重症群であり,入院1週のリハビリでも運動FIMが21点(ほぼ全介助)でした.このように,重症例においては,直接の自宅復帰は困難なことが多く,回復期リハビリ病院への転院を選択する場合が多くなります.
しかし図4に示すように,入院時のNIHSSが高い重症例においても,早期リハビリを1ヵ月集中することにより,日常生活動作の自立度(運動FIM)が改善し,直接自宅復帰できた群が38例中6例(16%)ありました.このように,重症例であっても,早期からのリハビリを実施すれば改善し自宅復帰できる例があることが急性期におけるリハビリの重要な治療効果と言えます.この自宅復帰群のFIM効率(1日のリハビリにより運動FIMスコアが何点アップするか)は0.81となっています.一方,転院群のFIM効率は0.34でした.リハビリ開始後の改善の度合いにより,自宅復帰か,それとも回復期リハ病院への転院とするか選択することになります.

退院後の在宅におけるリハビリテーションサービス体系
図5には,退院後の在宅におけるリハビリテーションサービスのシステムを図示しました.医療保険をする場合と,介護保険を利用する場合のいずれかのシステムを利用します.医療保険においては,退院後3ヶ月間は,最大で週4回の訪問リハビリの利用が可能です.自宅に近いかかりつけ医の先生の診療を受けて,訪問リハビリを継続することが可能となっています.その後回復経過により訪問リハビリの回数を調整することになります.

退院後の訪問リハビリテーション実施例
脳卒中の運動麻痺などの回復には通常1年から2年のリハビリテーションが必要となります。図6,7、8には,当院における早期リハビリテーションを実施後、歩行を獲得し、自宅復帰、その後、在宅にて訪問リハビリテーションを継続実施して改善を示している方の経過と初期CT写真を示します。図6では、初期にはほぼ完全右片麻痺でしたが、6週クリニカルパス(後述)を用いて早期リハビリテーションを実施、4週で歩行を獲得、6週で自宅復帰をして、その後訪問リハビリテーションを利用されて、2年間で徐々に改善されているケースを示します。現在は、Gait-Solutionという下肢装具を用いて杖なしでの歩行が自立、右手でピアノを弾くことも可能となっています。
こうした回復には個人差がありますが、発症のごく早期から開始すること、自宅という住み慣れた環境の中で、心理面でも安定してリハビリテーションを継続していくことなどがポイントとなります。

脳卒中クリニカルパス
脳卒中リハビリテーションを急性期から効果的に実施していくために、当院では、患者さんの発症前の活動度、麻痺の重症度、高次脳機能障害の有無などをもとに、3週、4週、6週のクリニカルパスを用いて、在宅復帰後のリハビリテーションに継続するシステムをとっています。
図9にはその一例を示しますが、歩行訓練の開始時期、日常生活動作の獲得時期、自宅退院の時期などが示されています。何よりも、早期にリハビリを開始し、歩行などの獲得をはかることが目標となります。脳卒中リハビリにおける脳組織の回復可能性に富む時期は、発症後の4週までが最大であると言われているからです。
図10には、クリニカルパスを用いてリハビリテーションを実施する方に対する、1日のリハビリテーション実施プログラム例を示します。1単位とは20分間のリハビリテーション実施単位であり、現在保険診療では、急性期には1日9単位の実施が認められています。


図11,12,13には、クリニカルパスを用いてリハビリテーションを実施した患者さんに対する、全体のリハ実施単位数の平均、それによる日常生活動作ADLの評価項目である運動FIMの改善の効率、さらに在院日数を示します。
急性期から多くのリハビリテーションの実施時間がなされることにより、ADLの改善が速やかに進み、在宅復帰も早期に可能となることを示しています。

図14,15には平成19年4月〜9月における、クリニカルパスを用いてリハビリテーションを実施した脳卒中患者さんの治療成績を示します。3週パス適用群では26日の入院で、7割の方が自宅復帰をされています。4週パス群では53.8%の自宅復帰となっています。6週パス群では、転院例が多くなっています。図15に示すパス群別の運動FIMの改善の傾向のように、急性期の短期間で歩行を含めたADLが改善しています。
相澤病院における急性期患者さんに対するリハビリテーション実施率
図16には脳梗塞患者さんに対する全国の急性期病院におけるリハビリ実施率とリハビリの平均実施単位数のデータ(グローバルヘルスコンサルティング社作成)を示します。このデータからは、相澤病院における脳梗塞患者さんに対するリハビリ実施率と実施時間が、極めて高い位置にあることを伺い知ることができます。
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