各脳卒中・脳神経センター 脳血管内治療センター

脳血管内治療とは、開頭手術の難しい場所にある脳の動脈瘤や脳の血管の奇形を、血管の中から埋めたり、脳の血管が細くなって詰まっている部分を広げたりする治療で、「カテーテル治療」などと呼ばれることもあります。

当センターは、全国でも数少ない脳血管内治療を専任とする診療部門で、治療をお受けになる患者様ご本人とそのご家族の皆様に安心で快適に脳血管内治療がお受けいただけるよう、体制を整えております。

医師紹介

佐藤 大輔

脳卒中・脳神経センター
脳血管内治療センター
センター長

  • 平成12年 京都大学医学部卒
  • 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医

堤 圭治

脳卒中・脳神経センター
脳血管内治療センター
医師

  • 平成17年 信州大学医学部卒
  • 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
  • 日本脳卒中学会脳卒中専門医

・スタッフ構成

スタッフは常勤医師2名(日本脳神経血管内治療学会専門医2名)と放射線部技師、看護師より構成され、その他院外より研修者(医師)1名を受け入れております。

入院診療体制

脳血管内治療に関しては、脳動脈瘤、頭頚部の動脈硬化性血管狭窄、硬膜動静脈瘻等を中心に当センターにおける入院治療を行うとともに、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血症例などに対しては、必要に応じて出張治療を行っております。

概要

当センターは、平成13年10月に設立された、全国でも数少ない脳血管内治療を専任とする診療部門です。長野県随一の脳血管内治療の実施施設として、安全で確実な治療を行うのみでなく、インフォームドコンセントを充実させ、また、看護師をはじめとするスタッフの教育を徹底させ、治療をお受けになる患者様ご本人とそのご家族の皆様に安心で快適に脳血管内治療がお受けいただけるよう、体制を整えております。

脳卒中などの診断や治療において非常に重要な脳血管造影検査を、脳卒中脳疾患センターにおける画像診断部門として行うことによって、診断精度と安全性の向上を目指しております。

・脳血管内治療について

脳血管内治療の概略詳細はこちら

脳血管内治療とは

脳血管内治療(手術)とは聞き慣れない言葉だと思います。
この治療法を簡単にご説明すると、頭を切開する「開頭手術」の代わりに、「脳の病気を、血管の内から細い管を使って治療(手術)する」方法です。
特に最近では、器具が進歩して、いろいろな脳の病気の治療が可能となってきました。

脳血管内治療の概略

脳血管内治療には、大きく分けて
①血管の異常な部分を閉塞する「塞栓術」、
②狭くなったり詰まってしまった血管の流れを良くする「血行再建術」、
③血管の異常や腫瘍の栄養血管に直接薬剤を注射する「選択的薬剤注入」

などがあります。

①「塞栓術」
脳の血管の異常や、脳腫瘍に栄養を与えている血管を塞いでしまう治療です。
「塞栓術」で治療ができる病気は、
・動脈瘤(血管の一部がこぶのように膨らんだ状態で、「くも膜下出血」などの原因になる)
・動静脈奇形(毛細血管ができ損ねてしまって、動脈から直接静脈に血液が流れ込む奇形で、けいれんや脳内出血 の原因になる)
・硬膜動静脈瘻(脳を包む硬膜の動脈が脳の血液を集める太い静脈に直接流れ込む異常)
・脳や顔面などの腫瘍
・外傷(けが)に伴う太い血管の損傷 などがあります。
②「血行再建術」
血管が狭くなった部分を風船(バルーン)や金属製の柱(ステント)で押し広げたり、心臓などから流れてきて脳の血管を塞いでしまった血の塊(血栓)を溶かして脳の血液の流れを良くする治療です。
「血行再建術」で治療ができる病気は、
・動脈硬化症(脳に行く太い血管が肩や首などの部分で狭くなって、脳の血液の流れが悪くなったりする。狭心症や心筋梗塞の患者様に多い)
・脳動脈硬化症(頭の中で脳の血管が細くなって、脳の血液の流れが悪くなる)
・脳塞栓症(心臓の中にできた血液の塊が流れてきて脳の血管が詰まる。不整脈の患者様に多い)
・くも膜下出血のあとの脳血管攣縮(くも膜下に出た血液の作用で脳の血管が細くなって脳こうそくなどを起こす)などがあります。
③「選択的薬剤注入」
脳の血管の中まで細いカテーテルを入れて、病気の部分に直接薬を注射する治療です。
「選択的薬剤注入」で治療ができる病気は、
・脳腫瘍(脳腫瘍に対して抗癌剤を直接濃い濃度で注射する)
・くも膜下出血のあとの脳血管攣縮 などがあります。

脳血管内治療の対象疾患詳細はこちら

塞栓術

脳動脈瘤詳細はこちら
脳動脈瘤の塞栓術

脳動脈瘤は脳の血管の一部が膨らんで弱くなった病気で、くも膜下出血の原因となります。
通常は開頭手術をして、「クリップ」で動脈瘤の根元をはさんでふさぐ事が多いのですが、動脈瘤の場所が手術しにくい所にあったり、他に病気をお持ちだったりして開頭手術野全身麻酔が危険だと考えられる場合などは「塞栓術」の出番になります。

動脈瘤の塞栓術には、金属(プラチナ)でできた「コイル」を使います。
コイルは、非常に柔らかく、動脈瘤を傷つけにくく作ってあります。
最近は、コイルで塞いだ動脈瘤が早く確実に固まる様に、コイルの表面を樹脂で覆ったコイルも開発されています。
動脈瘤の中に誘導した細いカテーテルを通して、コイルで動脈瘤の中を埋めてしまうわけです。

最近の研究では、くも膜下出血の患者様で、クリップでもコイルでも治療が可能な方に対しては、コイルで治療を行った方が一年後の成績がよいということが明らかにされています。

動脈瘤の塞栓術の具体的な方法を図で示します。
まずは、足の付け根の血管から、首の血管の中まで2mmほどの管を進めます。
次に、この管の中を通して動脈瘤の中まで、治療用の管(カテーテル)を注意深く進めます。

この治療用のカテーテルの中を通して、動脈瘤の中にコイルを入れていき、動脈瘤を内側から埋めていくわけです。

コイルは治療の途中は引き戻すことができるように手元と細い線でつながっています。
最後に水圧や電気の力でコイルを切り離して、コイルだけを動脈瘤の中に残します。

脳動脈瘤の症例
症例1:脳動脈瘤に対する脳血管内治療

・68歳女性
・未破裂脳低動脈瘤
・顔面けいれんの精査にて偶然発見

症例2:脳動脈瘤に対する脳血管内治療

・61歳女性
・未破裂左内頚動脈瘤
・頭痛の精査にて偶然発見

→瘤頚部にバルン付きカテーテルを留置し閉塞

動静脈奇形(AVM)詳細はこちら
脳動静脈奇形の塞栓術

脳動静脈奇形の場合は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で全身の血管を作る過程で、毛細血管を一部作りそこねてしまい、動脈の血液が静脈へと直接流れ込んでしまう状態です。これが皮膚に出来れば、血管が浮き出たような「あざ」になるわけですが、脳に出来てしまうと脳出血やてんかん発作の原因となります。

治療は手術で切除(摘出)したり、放射線を使って灼いてしまったり(放射線手術:ガンマナイフなど)するわけですが、奇形が大きいと手術でも放射線でも治療が難しくなります。そのような場合、塞栓術で異常血管の血流を減らしたり、大きさを小さくしたりしてから、摘出手術や放射線手術を行います。

塞栓術は、奇形血管に血液を送っている血管の中に治療用の管(カテーテル)を入れて、カテーテルから液体状の樹脂を流し込んで異常血管を塞ぎます。

動静脈奇形は毛細血管を作り損ねた血管の異常です。脳の血管の末梢にできることが多いです。とても細くて柔らかいカテーテルを使って奇形のすぐ近くまでカテーテルを進めます。

カテーテルから液体状の樹脂を流し込みます。樹脂は血液と混ざると固まり、異常血管を血管の中から固めてしまいます。

脳動静脈奇形をこのような方法で小さくして、ガンマナイフで直素事が出来るサイズにしたり、摘出手術の時に出血しにくくして、手術をしやすくしたりします。

症例:脳AVMに対する脳血管内治療

・52歳男性
・脳ドックで発見、経過観察されていたAVM
 4月15日、頭痛、視野障害で発症した。
・血管奇形の外側に血腫出血点(矢印)あり


→出血点は直接動静脈瘻、選択的に出血点を閉塞

脳・脊髄硬膜動静脈瘻
外傷性動静脈瘻
脳・頭頚部・脊椎腫瘍詳細はこちら
脳腫瘍の塞栓術

脳腫瘍も生きていますから、栄養を血管からもらっています。このように、腫瘍に血液を与えている血管を「栄養血管」と呼びます。腫瘍の種類によっては、非常に多くの栄養血管があり、手術で摘出する時に大量の出血が起こって手術が難しくなることがあります。

このような場合、手術に先立って腫瘍の栄養血管をふさいでしまえば、手術の時の出血が少なくできます。栄養血管の閉塞には、カテーテルから栄養血管の中に細かい粉末状の樹脂を流し込み、腫瘍の中でこれらが血管に引っかかって血管を閉塞します。

この方法を使って、鼻血が止まらないときや、顔や頭の皮膚の血管の異常(血管腫)、脳を包む袋(硬膜)の血管の異常(動静脈瘻)を塞ぐこともできます。
腫瘍や血管の異常を動脈から治療用の管(カテーテル)を入れて(「経動脈的」に)塞栓治療する場合を図で説明します。

腫瘍に血液を送る動脈の中にカテーテルを入れます。カテーテルは粉末状の樹脂を流し込むためやや太いものを使います。カテーテルの中を通して、0.2から0.3mmの大きさの樹脂(粉末)を流し込んで、腫瘍の中の細かい血管や、出血を起こしている血管を塞ぎます。

この方法では、血液の流れを止める効果は一時的なものです。腫瘍などの手術の時の出血を減らす目的や、一時的に鼻血などを止めるときに利用されます。

血行再建術

脳梗塞の治療法
血管形成術(PTA) -頭蓋内血管狭窄症 -頚部血管狭窄症詳細はこちら
経皮的血管形成術

経皮的血管形成術は、動脈硬化などで細くなってしまった血管を風船(バルーン)のついたカテーテルで押し広げて、そこが再び細くならないように必要に応じて金属の柱(ステント)で支える治療です。

首の部分の頚動脈にこのような狭窄が起こりやすいのですが、首の血管は首の動きと共に動きますし、血管そのものに外から力が加わることも少なくないので、これまでは治療が困難でした。しかし、首の動きに従って曲がることの出来る柔らかく弾力のあるステントなどが開発されたことで比較的安全に治療が出来るようになり、平成20年4月より保険で認められました。

動脈硬化による血管の狭い部分は、血管の壁に部分的に脂肪などが溜まった「アテローマ(粥腫)」と呼ばれる部分ができることで起こります。この治療のもう一つの難しい点として、血管を広げるためにアテローマを押しつぶすと、そのかすが脳に流れて脳こうそくを起こす危険があることです。そのため、実際の治療ではアテローマのかすが脳に流れることを防ぐために、狭窄部よりも下流の部分に網(フィルター)を一時的に留置して、このかすを集めつつ狭窄部を広げます。

  • 1.
    足の付け根から、細い針金の先端にフィルターがついた物を、狭窄の下流に留置します。
  • 2.
    細い管の先端に風船の付いたカテーテル(バルーンカテーテル)を血管の中に入れ、血管の狭い部分(プラークの部分)に通します。
  • 3.
    バルーンは非常に高い圧力で膨らませることができるように、非常に丈夫に作られています。このバルーンで動脈硬化のプラークを押しつぶして、狭い部分を押し広げます。バルーンで血管を押し広げている時間は30秒から1分程度です。このときに出来たプラークの破片(かす)は、フィルターに引っかかります。
  • 4.
    バルーンカテーテルで狭くなった血管を押し広げても、プラークにカルシウムなどが溜まっていて硬かったりすると、いったん広がっても血管の弾力ですぐに縮んで狭くなってしまいます。このようなときは、バルーンで広げた血管が再び縮んでしまわないように、「ステント」と呼ばれる金属製の柱を血管の中に入れます。ステントを留置したら、フィルターを回収します。
    狭窄していた血管は広がり、血流が回復します。
  • 血管用ステントには、バルーンの力で細かい切れ込みの入った金属のチューブを押し開いて、バルーンを縮めてもこの金属のチューブは広がったままで血管の中に残る「バルーン拡張型」と呼ばれるものと、細いビニールチューブの中に縮めて入れてある網状の金属の管で、血管の狭い部分でチューブから押し出すと広がる「自己拡張型」と呼ばれるものがあります。
    どちらのタイプのステントが良いかは、狭窄のある血管の場所などによって使い分けます。
  • バルーン拡張型のステントの写真です。
    細いステンレスのチューブに縦に細かい溝が入っていて、これをバルーンで押し広げると網目状に広がります。
    「七夕」の飾りの「ちょうちん」と同じ理屈です。
    一度広がったステントはバルーンを縮めても広がったままで血管の中に残ります。
    欠点は、一度広がっても上から押したりするとつぶれてしまう点です。
  • 自己拡張型のステントの写真です。
    形状記憶合金で出来たスプリング状のリングがムカデのようにつないであります。このステントがビニールチューブの中に縮めて納めてあります。血管の狭い部分にこのチューブごと入れていって、外側のチューブを引き抜くとステントが自分の力で広がります。ある程度の弾力性があるので、動いたり、上から押されたりする場所でも大丈夫です。
症例:頭蓋内血管狭窄に対するPTA

症例:動脈硬化症に対する経皮的血管形成術

・85歳男性
・2回の脳梗塞発作で発見された左内頚動脈狭窄症。
 脳梗塞の発作がこの狭窄の為と判断され治療を行う。
・新たな脳梗塞症状の出現なく退院。


→自己拡張型ステントを用いて拡張

器具詳しい情報はこちら

治療実績

・脳血管内治療件数(2013~2017年)

症例 治療件数
脳動脈瘤塞栓術 141
経皮的血栓回収術 119
頸動脈ステント留置術 57
硬膜動静脈瘻 21
脳動脈血管形成術 5
脳動静脈奇形 4
その他 18
合計 365

地域医療との連携

地域の先生方との密接な連携の下、頭頚部血管のスクリーニング検査などに積極的に取り組んでおります。脳動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血症例などで患者様の移送の困難な症例については、出張による治療も行っております。脳血管造影検査、血管内治療の適応等に関するご相談は、患者様に外来受診していただくのみならず郵送、お電話、FAX、お問合せフォーム等にてお受けしております。

取り組み

当院では、手術治療や薬物治療、ガンマナイフ治療と血管内治療とをうまく使い分け、組み合わせて、それぞれの患者様にとってより良い治療をお受けいただけるように努力しております。

放射線防護と被曝線量低減に関して

脳血管内治療は、X線を利用して、体内のカテーテルの位置や状況を把握しながら施行します。しかしその中でも、可能な限り医療被曝を減らし、より低侵襲な治療を実現するため、当センターでは「被曝線量低減推進プロジェクトチーム」を結成し、活動しております。

取り組み

被曝線量低減推進プロジェクトチームでは、血管撮影装置の撮影条件や撮影のコマ数を見直すことにより、安全な治療を担保しつつ、同時に大幅な照射線量の低減を図ることができました。

透視条件の変更と線量低減詳細はこちら

透視条件の変更と線量低減

通常では7.5コマ/sec Lowモードで透視しております。初期設定の52%減の照射線量で治療可能となっています。

撮影条件の変更と線量低減詳細はこちら

撮影条件の変更と線量低減

通常はCerebral 4-2 Low Dose , Embolization 2/secモードで治療を行っております。それぞれ初期設定の約60-80%程度の線量低減を達成しております。

当院の電子カルテ内に、血管内治療の際の被曝線量を記録する新しいシステムを構築し、これまで以上に患者様の被曝線量の把握を徹底しました。

学会発表

第65回日本病院学会  「頭部血管撮影における患者被ばく線量低減にむけた取り組み」

放射線画像診断センター 上沢 一夫

施設認定

全国循環器撮影研究会 「被曝線量低減推進施設」

ページの先頭に戻る▲